彼女はどうにか王子を発憤させようと力強く言った。
「わたくしの見る限り、事態はそれほど深刻なようには思えません。王の不在にも前例があります。皆知恵も分別もある大人でしょう」
彼女は我ながら大胆な事を言っているな、と少し自分に驚いていた。
「問題は、この時代に生きて育つ少年少女たちです」
王子はやや、顔をあげた。もう少しだ。
「そうか……彼らの未来を摘むようでは執政者失格だな」
「悲観をしている場合ではありませんよ。これでは戦後(いくさあと)のようです。弱い者から飢え、死んでゆく。本当の犠牲者は子供らです」
マグヌス。
王子の唇が動く。祈りのように。