「わたくしははっきり申し上げますが、宰相殿は被害者です」


 威風堂々と語る彼女に、異を唱える者はなかった。

 感涙する者までいた。

 みんな、何かにすがって、安心したいだけなのだった。リリアの店には楽徒の静かな、穏やかな調べが流れ始めた。

 広場を抜けると、店の者はのんびり欠伸をし、若者達は路地裏で樽の上に腰掛けては背を丸めて愚痴を言い合い、暇をつぶすのが彼らの習いになっていた。

 城下の者は仕事の間に遊んではいるが、そもそも店に客が来ないのだ。
 街の雰囲気は悪くなる一方。