リッキーが苦しい胸の内を話そうと覚悟を決めたとき、その母親は胸を張って真っ向から議論していた。

 彼女の店はちょっとしたサロンになっている。

 だれか不用意に噂を口にしたのだろうか。

 別に客に悪気はなく、単に情報交換のつもりだったのかはわからない。


「確かに王の不在はここ数年なかったことです。戦を治め、平安の世をつくり、この城下へも人らしい暮らしと安らぎをくださった」


 その声は蕩々としてゆるぎがない。


「英雄です。神にも等しいのです。ですが宰相殿に追われたなどと、なんの根拠もない根も葉もないことです」


 それは聞く者に不思議な説得力を与えた。