彼女は笑い飛ばした。
 何がおかしいもんかとルイが真剣に言う。

 辺り一面、夏に咲くというヒナゲシが揺れて、朝靄が谷の間に漂っていた。

 谷を一望する大岩の上で、リッキーを引きあげてくれるルイの手は冷たかった。


「で? 呼び出したワケはなんだ」


「別に。オレのこと覚えてるかなって」


「忘れるわけがない」


「花乙女はさ……」
「なんだ、おまえまで」


 リッキーはルイの真意をはかろうと、正面から彼の目をのぞき込んだ。


「聞いてくれないか? 花乙女は無条件で破瓜されるだろう。何故だと思う」