「なんだ、親切をかってでてきてくれたのか。怪しい気配がしたので勝手にからだが動いてしまった。気のせいだな。すまない」


 と言って、差し出した彼女の手を、しかし男はとらなかった。


「親切で人気のないところまで足を運んだのだろう? それならば一つ相談に乗ってくれないか? 最近迷惑なことがあってな」


 アレキサンドラが言った。
「なんだ? 言ってみろよ」
「……手紙だ」


 男は先ほど関節技をキめられてしまった事などコロリと忘れ、身を乗り出すようにして、さらにみごとな体躯を見せつけるように腕組みをした。