リック、と再三、王子はリッキーの呼び名を間違えた。が、リッキーはそう呼ばれるのに抵抗を示さなかった。


 今更、ということもある。


「クール、かとも思えばクルーエルで、どうなっているんだ、その頭は」


 ため息のようにいわずもがなのことを言う王子。


 性格が反転したというより、破綻したといった方がふさわしい。


 リッキーの心の中では、人を傷つけたくない優しい心と、都合の悪い者を全て抹消すべきだ、との思いが対立し、渦巻いていた。


「あなたもご覧になったことがおありでしょう、人と人が争う様を」
「当然、あるが」