「ボクはいやだ。生まれ育ったこの町でみんなと一緒の空の下で息をしていたい」


 だが、母は一時も一瞥たりともしない。

 アレキサンドラはわかっていて、未だ親離れをしない。巣立とうにも基盤が全く与えられていないのだ。

 どちらを向けば一人前になる道があるのか。

 見えない。わからない。

 飛び立てない! このままじゃ、まだ。

 風が……たりない。

 彼女はふらり、と公園の広場へと足をむけた。ルイが配達のアルバイトの傍ら、階段で屋台の甘い菓子を食べて、こちらをむいた。

 その翼は飛び立って行くための翼。だけど降り立つ処がなくては弱ってしまう。帰ってくるための翼が、巣がないのだ。