「リック、どうしたのだ。どこへ行こうというのだ。この私がいるのに」
「失礼いたします。ボクは用事ができましたので、今日はここでさがらせて頂きます」
彼女は叫び、城門を走ってくぐり抜けた。
そしてリリアを再び喜ばせに店に駆け込んだ……いや、駆け込もうとしたのだ。
『どちらも竜殺しの証……、娘は邪眼と、王子は獣の肉体をすでに身につけてしまった。封印の効力はいつまで持つか……なんて忌々しい……』
母の沈痛な声に、軒先近くで足を止めたアレキサンドラ。竜殺し、邪眼、とのつぶやきが心を蝕もうとする。
「ああ、やはり。お母さんは自分のことがお嫌いだったのだ。浮かれてたりしてバカだった」