「最初はどうだった? 双子のおまえ達は争わず、仲良く育った。視界には互いしか見えない時もあったろう……だが母と死別した」


 マグヌムは今度こそ身を乗り出し彼女を見た。

 見てはならなかった。彼女の目は闇の中の月のように静かなきらめきを放っていた。


「いち早くその不幸に気付いたのは兄、マグヌス」
 

 マグヌムはハッとして辺りをキョロキョロ探り始めた。兄はいない。

 どこにも見えない。

 何も見えない。

 アレキサンドラの闇の目に絡め取られて。心細い。

 それが何より屈辱だというように、もがき、首を振る。


「たとえ身が滅ぼうとも、おまえを守らねばと思ったのもマグヌスだった。おまえはそれに気付かなかった」