途端に彼女自身の口から地獄の怨嗟が飛び出てくる。


「なぜ、私を育ててくれなかった。なぜ、微笑みで私を起こしてくれなかった! なぜ優しい言葉をこの耳に注いでくれなかった。なぜ、かぐわしい乳で満たしてくれなかった。愛していると、あい、していると、なぜ誕生を言(こと)祝(ほ)いでくれなかった! こんなことなら、生まれなければ良かった。愛されないのなら、生きている意味も、価値も、なにもない!」


 彼女はそれ以上を口にしなかった。

 ぐっと息を殺し、唇をかみしめて、鉄の味を味わっていた。

 赤子は彼女の怨嗟を吸い取ってどんどん一体化していった。


「いいのよ。わたしが抱きしめてあげる。あなたはわたし自身だから。わたしがあなたを育ててあげる。いつか、独り立ちできるように……」


 王子はただ呆然として事を見守った。