辺りの様子に呆然として、動けないようだった。

 悪ぶってはいても、正体は王子以下の軟弱で、今までずっと誰かに助けられ、当然のように守られていたのだから、仕方がない。


『俺を喰らうのか。退屈しのぎに去られるのがそんなにもったいないのか』


『強がるな。おまえの器量は知れている。楽しかっただろう、黄泉の屑箱へ行く前に、もう一度遊ぶか? 手加減はしないがな』


 がらがらと割れ鐘のような声が地獄中に響いた、そんな思いまでして、なぜ彼は帰ろうとしないのだろう。

 マグヌムは。


『俺は兄貴に会いたい。でももう遅い。肉体を失っては地上に出ることもままならないだろう。だが、再び出会えた時は、一緒に笑ってくれるか』


「何を、弱気なことを!」