「それに……なに?」
「なに、って?」
「なにか言いかけたろう。気になるから言っとけ」
ああ、というように、アレキサンドラは手を打った。
「まだ、お兄さんに会って謝ってない、て言おうとしたでしょ」
彼女の瞳は地獄の闇にも負けず、星のようにきらめいていた。
「そんなことはない」
「はいはい、じゃあ、その気になったら正解を教えてよね」
そうして離れていこうとするアレキサンドラの腕を取ろうとして、マグヌムは戸惑った。
王子はというと、それらの様子を逐一、観察していた。
だから、彼はマグヌムを許すのには時間がかかる、と直感した。