「おまえは! あの城で何を見てきた! 何をするつもりだった?」


「べつに。じつに応えづらい質問をなさる方だ。だが応じましょう。俺は? ただ王様になって、皆のうえに君臨したら、気持ちが良さそうだ、と思っただけだ」


 ぐいっと襟元を引き寄せられ、高く、持ち上げられた。彼は、いや、彼ばかりでなくアレキサンドラもすっかり忘れていたが、マグヌムは凶暴で残虐なのだった。

 竜の血を引くだけあって力が有り余っている。

 モンクス長衣の下は偉く背の高い男の姿なので王子は宙づりになった。

 王子は抵抗しなかった。

 下手に騒いでも力の差が歴然としていたし、消耗が激しい。

 だからといって、すみやかに解放される保証もなかったけれど。彼は王子を放り捨てた。

 胸を押さえる王子……アレキサンドラはすぐにでも彼のもとへ駆けつけたかった。

 なのに、足が動いてくれないのだ。