(でも、あのマドンナの涙の味は美味かった。もうちょっと吸っとけばよかったな)


 なにしろ上等の魂のエキスが涙に混じり、無尽蔵に、広い地獄に雨のようにふりまかれたのだから。


(うん、亡者だって悪かなかったさ。あの二人には脱帽だ。きっとカルマ値がだいぶ上がっていたのだろう。遅かれ早かれ、天からお迎えが来てたさ)


『でもよー、結局あの二人はあの場で引き返すことがなかった。他の亡者たちと共に天上へ向かわなかった。彼らはたった二人で本当に天界へ向かえたのか? 共に地獄を這い上がってきた者たちを置いて』


「あの場で奇跡の梯子を見て、感動しない二人ではなかった。それにマドンナは三度振り返った。きっと、後に続くことのない他の亡者たちが気がかりだったのだと思うよ」