『なーにしてんのだ。ここは地獄だぞう? 神への祈りなんて、通用すると思う?』


「そうか、クリスチーネはここへきて、絶望、してしまったのだったな……しかし、共に奇跡を見てきた友でもある」


 クリスチーネは突然チャームの魔法にかけられたように、彼女から目が離せなくなった。


「見ただろう、最下層から天へ召された者たちを。彼らの救われた表情をボクは忘れないよ。今でさえ、涙が出そうだ」


 でもさ、あれって罠だよね、絶対。

 クリスチーネは密かに思う。

 涙のマドンナと大でこ坊やが亡者をいやしてしまう、地獄を変えてしまう、と知って、きっと主が手配したんだろう。

 つまり、偽物。

 天上から救いの手なんてそうそうあるわけがないのだ。