とマミィが激しく鳴くのでやはり違うのだと思った。だが、このマミィには見覚えがある。

 確か、彼女がフルーレで目を貫いた雄牛のように見える。目に傷はない。

 別の個体か治癒したのか。

 どちらにしろアレキサンドラには彼がかわいそうに見えた。

 まだ元気そうなのに、なぜ包帯巻きになどされているのだと。


『いいっじゃんかー。むき出しだとアレだよ、また襲いにきて、さらわれちゃうかもよー』


「それでもだ。ボクは理不尽な事には我慢がならないんだ」


『地獄の化け物はもっともっと理不尽なんだぞ』


「どれ、やけどでもしているのか? 診てやろう。良い薬がある……」


『ふっざけんなー! この緊急事態に! 俺はあんたを見限った!』


 と、いうと、クリスチーネは一番端の右側の通路へと走り込んだ。