なのに、さっきの天パ君の場合、なぜだかそうは感じなかった。
なんでだろう。
「あなたが皐月ちゃん??」
あたしが、港でぼんやりと立っていると不意に後ろから声をかけられた。
40代前半の女性でたぶん佐々木さんだ。
「はい。」
あたしは静かに、そして冷静に返事をした。
すると、彼女はにっこりと笑った。
その笑顔はあたしにとってはあの海という男子と同じ顔に見え、暖かさを感じた。
「私は佐々木 夏子です。今日からよろしくお願いしますね。」
と夏子さんはあたしに向かって深く一礼した。
「あたしは七海 皐月です。これからお世話になります。」
あたしも同じように深く一礼した。
相手は笑っているのに、あたしは笑えない。
思った以上に辛いことだった。