悲しくなんかない


悲しくなんかない


「おねえちゃん?」

私は心の中で悲しくなんかないと
唱えた時に
一人の男の子が私の目の前に
立っていた


「おねえちゃん、かなしいの?」


その男の子は小学校1年生ぐらいの
小さな子で
野球の練習着を着ていた

「悲しくなんかないよ。」

私は笑って男の子の言った

「これあげゆ。」

そういって男の子は鞄から
なにかをとりだして
私の手の中に入れた

「これ・・・。」

私の手の中には
子供用の小さな野球ボールがあった

「それ、ぼくのたからものなんだ。
 はじめてうったときのボールなの。」

「そんな大切なものもらえないよ。」

私が男の子に返そうとしたら
男の子は首を大きく横に振った

「ぼくのたからものあげるから
 なかないで。」

男の子はそう言ってニコッと笑って
私の頭をなでた