「姉貴には才能がないからな」



「おもしろくない……」



 ぷっと頬をふくらます癖は昔のままだ。



「いつも初詣で、あんな力はいりません。立派な自立した女性になりたいって祈願してたよな? 神様がきいてくれたんじゃない?」



「あんた、聞いてたの?」



「べつに。誰にでも聞こえる声だったし」



 そう、この姉の唯一と言っていい美点はその美しい遠くまで届く澄んだ声だ。



(本当は美形とか子どもに親切とか、いろいろあるけど、そんなの俺から見たら身内のみびいき、引き倒し)