「とにかく、ここは君の立ち入れる場ではないし、なっちゃんはボクが大好きなひとだからとらないで欲しい」



「俺は、おまえのものなら何でも欲しい」



「そんなんだったら、鉛筆でも消しゴムでもやるから、なっちゃんだけはヤメテ……」



 のりおの笑顔はさわやかだった。たぶん、これまでの会話自体を楽しんでいたのだろう。



「じゃあ、この家かな、さしあたって欲しいのは」



うん? てことはボクになりかわって家を継ぐってこと?


 直裁に聞いた。


 のりおは笑った。



「やたら世間が狭いな、おまえは。不動産だよ。売っぱらうの。で、売れなきゃ貸家にして……いや、貸家より旅館、なんてどうだ」