「近親婚を繰り返すというのは、それなりの秘密があり、俺を候補にとはそのカムフラージュと口封じに懐柔策に出た、ともとれるが」
「よくもまあ、何にも知らずに。親父なんてなあ、なんの『力』もない入り婿だったから、そりゃあひどい目にあったんだぞ」
と、ボクは父にしかわからない世界を垣間見させてみようかと口火を切った。
「落っことしたフリして画鋲を足下にまかれたり、シャンプーとトリートメントの入れ物が入れ替わっていたり」
「そんな些細ないやがらせ、どうにでもかわせるだろう」
最悪だ。ボクは言う。
些細なことが毎日だと、ほとんど悲喜劇なんだけどな。