苦しかったろうなあ、そして悔しかったろう。


 残された子女は哀しかったろう。


 子供がいたらいたで悲しい母子家庭。


 遺族年金があったからって死んだ父親が帰ってくるというものでもない。


 家庭はからからと片方の車が失せた二輪車みたいだ。


 日本はこうして信仰の対象を奪われた悲しい国へと変貌したのだ。


 でも、ボク達みたいな者達もいるのだ。


 いつかひょっくり、神様がお生まれになってくるとも限らない。
  

 それまでおきつね様信仰を貫き、気長に待つさ。


 どんな小さな奇跡でも、ボクは見逃すまいと思う。


 案外、のりおはそんなさびれた家にやってきた福の神なんじゃないのか?



「気休めなんかじゃないさ。だって、のりおは立派に生きている。よろこぶべきだ。うん」