「いないよ、かっちゃん、どこにも」


 なっちゃんが泣きそうな声で上着の裾を引っ張る。ますます伸びる俺のティーシャツ。



「えー、恐竜持って家から出ちゃったのかな」


『できちゃったのかな』とでも言わんばかりの調子で言う。


 そう聞こえても俺は無実だ。


 なにも俺がめでたい騒ぎは?


 等と言ってもそのくらいでけしかけられたと思う姉でもない。



「どうせティーレックスを見せびらかしたくてよそんちで遊んでるんじゃない?」


 言ってしまってから、俺は失敗したと思った。


 いくら小三だからといって、借り物の人形をわざわざ他人に見せびらかしにいくものだろうか? 


 つじつまが合わない。


 道ばたでティーロボをいじってる可能性はあるが。