ボクが家督を継ぐようになった頃には、もうこの家と畑くらいしか残っていないかもしれない。



 出稼ぎに行くか、それとも衰退する一方なのか。



 なあのりお、ボクだって選択肢が残されているわけじゃあ、ないんだ。



「今日はもう夜になってしまうから、ご家族の方々に電話して、のりおくんには泊まっていってもらいなさい」



 と、いいつつ、のりおの身の上話に涙する父だった。



「君、うちで腹いっぱい、食べてゆきなさい。それだけの余裕はある」



 のりおが客室を固辞したので、急遽、ボクの部屋へ新たに客用布団が敷かれた。



「なあ、のりお」



 ボクはちょっとくつろいだ気分で腹を割ってみた。