――ごめん、レオ
私は彼の背中を見送りながら、心の中でそう呟いた。
レオのいないエスプレッシーボで何曲か歌いきった後
「皆様、聞いてくださってありがとうございました。この後もいい夜をお過ごしください。」
ライブ後の決まり文句をステージで言って、颯爽とステージ裏まで歩いていくと
「レオくんが控え室にいる。
なにがあったのかはわからないけれど……、ちゃんと話をしてあげなさい。」
厳しい顔をしたマスターに呼び止められた。
「うん……、そうね。
ありがとう、マスター。」
レオ
かわいいかわいい、私のレオ
彼は今日の私を見て、どんなに苦しんだかわからない。
彼は頭のいい子だから
ちゃんと説明しなきゃ、納得しないだろう。
「レオには私からちゃんと話すわ。
ありがとう、マスター。」
そう言って
レオの待つ、控え室へ行こうと踵を返すと
「その話……
僕も同伴させてもらってもいいかな?」
私の目の前には
あの頃と変わらないコロンを身にまとい、優しく柔らかに微笑む、譲さんの姿があった。
「譲……さん」
「捜したよ、アンナ。
僕の大切な宝物……」
そう言って
譲さんは私をきつくきつく抱きしめた――……。