『譲さん』
『どうしたの?アンナ。』
『…私に最後のレッスンをして。』
春の日差しが降り注ぐ、温かで柔らかなリビングで私は突然、譲さんにこう切り出した。
ソファーに横になりながら本を読んでいた譲さんは、私の言葉を聞いて
『どうしたの、突然。
今の君は何もかもが既に完璧に近いのに。
知識も教養も立ち振る舞いも、なにもかもが僕の理想なのに、これ以上何を望むの。』
そう言って
顔色一つ
しぐさ一つ変えずに、クスクス笑った。
――また僕のかわいい天使がワガママを言っている
優くて温かいこの人はそう思ったに違いない。
これから言う、私の悪魔の一言になんて勘付きもせず、ただ漫然と柔らかに微笑むばかり。
そんな風に温かで柔らかな光に包まれたリビングで
『私を抱いて。』
『…え??』
『私を女の子じゃなくオンナにして。
他の誰でもない、譲さんの手でオンナにしてよ。』
私はこんな提案を譲さんに持ちかけた。