「潮見さんなんかにホレたらね?
不特定多数のその他大勢にされるのが関の山だよ。」
「わっ!ばらすなよ、Kiri!!」
「バラすよ。
俺の大事なカノジョを潮見さんのオモチャにされたくないからね。」
引き寄せられ
いつのまにか
抱きしめられて
カレの腕の中で
小さな子猫のように
すっぽり覆われていると
さっきまでの不安が
ウソのように
溶けていく
あの遊園地でのバスのように
こうして後ろから
抱きすくめられていると
なぜかひどく安心する。
カレから香る香水の匂いも
温かさも
なにもかも変わらない。
姿は素敵な王子さまでも
中身はいつもの成宮くん。
そう思うと
なぜかひどく安心したんだ。
その瞬間……
私ははたと気づいたんだ。
あぁ、そっか。
変わってたのは
カレじゃない。
変わっていたのは
他でもない、この私。
この私自身がカレを
おかしな目で
見てしまっていたんだ…。