緋国と羅国は対等ではあるが、交流はほとんど無いも同然である。
それぞれの皇帝がお互いの顔を知っているくらいで、つかず離れずの関係を長年保っていた……
というのが、駿瑛と鼬瓏が皇帝となる以前までの関係であった。
「劉 李瑛? 鼬瓏の名ではないのか?」
「はい。鼬瓏様のお名前ではありません」
「めずらしいな。いつもは、鼬瓏の名で手紙が届いてたのに……。内容は何だ?」
「……新しい皇帝が即位されるそうです」
「なに!? 新しい皇帝だと!」
駿瑛は、思わず机を叩き、立ち上がった。
「はい。そのように手紙が来ております。それで、駿瑛様に儀式に参加して欲しいと……」
驚く駿瑛とは対照的に、側近は冷静にそう言うと返事を待つ。
「……わかった。羅国には参加させてもらうと返事をしておいてくれ」
「わかりました。では、失礼します」
返事を聞き、側近は部屋を出て行った。