來は、判ってはいたが、勘違いであって欲しいとの思いを裏切る事実にショックを受ける。
「……一緒に行ってもいいですか? 羅国は若い者達だけでやっていけるでしょう。それに……それ以上に私は最後まで鼬瓏様にお仕えしたいのです。あの方達にもお会いしたいのです」
泣くのをこらえて來は言う。
決意は固いようだ。
「確か、來には双子の妹、蘭香(ランカ)がいただろう? 妹は、どうするのだ?」
「蘭香には、事情を話します。それで、できれば一緒に連れて行きたいと思っています。ただ一人の身内なので……」
「それで、いいのか?」
「いいのです。一緒に行かせてください」
翌日。
昨日の事を信じられずにいた新皇帝は心のどこかでまだいてくれると思っていた。
だが、鼬瓏は言葉どおりに、榎国へ行ってしまった。
「鼬瓏様、どうして行かれてしまわれたのですか?」
鼬瓏がいなくなったことを知り、人知れず涙を流した。