「入ってもよろしいでしょうか?」
「いいぞ」
「失礼します」
來は部屋に入ったが、少しの間、沈黙が続いていた。
その沈黙を破ったのは來であった。
「鼬瓏様は、もしかして、もうすぐ……」
「……何のことだ?」
「誤魔化さないで下さい!」
來の言いたいことがわかっていたが、事実を伝える気がなかった鼬瓏は、とぼけようとした。
しかし、いつもは物静かな來であったが、この時ばかりは声を荒げた。
「この推測は見当違いであって欲しいですが、もうすぐ……なのでしょう? だから、あの方達のところへ行かれるのでしょう?」
「……そうだ」
來の様子から鼬瓏は隠すことをやめ、静かに答えた。