「……いや、そなた達にとっては何かを言ったところで同じであろう」
何かを言いかけたが、言うのをやめる。
鼬瓏には、自分の決意が、側近の者達に絶望をもたらすであろうことは容易に想像できていた。
引き止められることも判っていたが、誰が何を言おうとも心を変える事はしないと決めていた。
しかし、その場になるとやはり心が揺らいだ。
そんな鼬瓏の様子を気にする余裕も無い憂羅は言った。
「そうです。それでも「それでも、我は、明日、榎国へ行く」
憂羅の言葉をさえぎり、鼬瓏は言った。
己に言い聞かせるかの様に……。
「今後のことは考えてある。我の後継者に後は任せよう」
静寂の中、鼬瓏は続ける。
「……そなたが次の皇帝だ」
鼬瓏は、一人の側近の者を指名した。