「おはようございます、陽紗様。もう、起きられたのですね」
「そうなの。何故か早くに目が覚めたのよ」
いつであれば、陽紗は、まだ寝ている時間であった。
「そうでしたか。まだ、時間も早いですし、庭でも散歩なされたらいかがですか?」
ふむと、陽紗は、少し考えたが、執事に勧められたとおりにしようと決める。
「そうしようかな。では、時間になったら呼びに来てね」
そう言って庭へと向かった。
ここの庭は、榎国の中でも花がたくさんあるところだ。
庭に着いた陽紗は辺りを見回した。
(久しぶりに来たけど、ここは変わらないな~)
それもそのはず、庭師達が藍家にいる女性やお客様達のために、丹精こめて手入れをしているからである。
その花たちを嬉しそうに眺めていた陽紗のところへ、陽紗の伯父──藍 麗孝(ラン リキョウ)がやってきた。
麗孝は、藍家の当主であり、陽紗が住んでいる屋敷の主であった。