緋国へ新皇帝即位の知らせが届く前まで、時を遡り、場所は榎国へと移る。
榎国──この世界で唯一の中立国であり、羅国と緋国との行き交いが頻繁に行われていた。
緋国と対立する秦国とも僅かばかりではあるが、繋がりがある。
そんな榎国は、四つの貴族──藍家(らんけ)、紅家(こうけ)、黒家(こくけ)、白家(はくけ)により、支えられている。
各貴族は、それぞれ四神──青龍、朱雀、玄武、白虎により守護されており、榎国が興って以来、皇帝に次ぐ権力を保持しているのである。
ここは、そんな榎国のとある一室。
「……ふぁ~……」
藍 陽紗(ラン ヨウシャ)は、上半身を起こし背伸びをした。
陽紗は、東方を護り、青龍の守護を受ける一族──藍家の出身である。
さて、まだ時間が早いけど着替えようかな。
と、陽紗は思い、服を選ぶ。
そして、服を着替え、部屋を出ると、
「おはよう」
向こうからやってきた執事に声をかける。