医者と高校生の会話にしては、
普通に考えれば違和感を抱くところだが、
この父と息子はまるで普通の会話のように,ドラマの中のような、
殺人とかドラッグなどと言う言葉を使っている。
が、心は通い合っているから温かい、と言う顔だ。
翌朝、京介が登校すると校内がヤケに騒がしかった。
みんな落ち着かずに浮き足立った様子だ。
職員室の周りでは教師達が、
一応教師の顔はしているが何となくうわずっている。
「京介さん、知っていますか。」
そんな気配を感じながら京介が、
いつものように皆を無視して教室の前まで来ると、
二年生の高橋直道が駆け寄って来た。
京介が来るのを待っていたようだ。
「何かあったのか。」
「はい。大変です、昨夜あの二人が死にました。」
「あの二人とは… 」
「桜本と外岡です。」
「何だと。何があったのだ。」
いきなり想定外の話を聞き、
京介の声が無意識に大きくなっている。
「分りません。今朝、
いつまで立っても起きて来ないから、お母さんが見に行き、
ベッドで死んでいるのを発見したそうです。
二人とも同じ状態だったらしいです。
桜本の家の近くに住む田中の話では、
朝早くに救急車が来て、
すぐに警察も来て…
不振死の疑いがあるから解剖に回されたという話です。
二人は棟こそ違うけど同じマンションなので
騒ぎも特別だったようです。」
不可解な事だが、
京介が興味を持っていることが分かり、
直道は自分の知りえた情報を伝えている。
それだけで何故か嬉しい気持ちになっている。