中の連中が何をしようとしていたのかは皆目分らないが、

奴らが若者にチーズを売っていると言うことは分かった。


今、襲ってきた男も奴らの仲間、面倒だから
七人全員を相手にしても、と思わないわけでもなかったが、

全く手掛かりが無いわけでも無い、
思い直して家に帰ることにした。




「遅かったな。飯は外で食って来たのか。」


「うん、ちょっとだけ食べたが、
あんなものは食った気がしない。
やっぱり父さんの作るものが一番うまい。」



そう言いながら京介は父が作ってくれた夕食をうまそうに頬張る。




「お前の学校で転落死があっただろう。
いくらお前でもそれぐらいは知っているな。」



京介がまだ夕飯を食っていると、
リビングにいた栄がダイニングに来て同じようにテーブルに座った。



「二年生の吉岡だ。父さん興味があるのか。」


「興味といえば不謹慎にも感じるが… 
実はな、その子は吉岡一郎と言う、
うちのレントゲン技師の息子だ。

今日はその事で持ちきりだった。
わしは単に仕事上の話しかしたことが無かったが、
サッカーの上手いスポーツマンだったそうだ。

検死に出されていた遺体が今日の夕方戻ったそうで
明日が通夜、明後日が葬式だ。」


「そうか。父さんも行くのか。」


「当たり前だ。しかし、親より先に行くとは不憫な事だ。
まだ高校生、将来が有る身で何も自殺などしなくても… 」


「自殺… 誰がそんな事を。」


「違うのか。内科の看護婦長の娘がやはり同じ学校で、
一年生の間ではそんな噂話が出回っているらしいぞ.


好きな女の子に振られて屋上から飛び降りたのではないのか。」



「冗談じゃあない。吉岡はそんなヤワではない。」



と、京介が吉岡豊を弁護するような言葉を出した時に、

栄は嬉しそうな顔をした。