そして、予定していた一週間は夢のように過ぎて行った。
「父さんは明日から仕事だね。」
「ああ、温泉を堪能して来たから、
新しいエネルギーが出番を待っていると言う感じだ。
あそこもいい湯だった。
お前はあと何日休みだ。」
最近は宅急便が普及している。
スキー道具や荷物、土産品も
一日遅れになるがきちんと配達してくれる。
それで今、羽田空港に着いた栄と京介は、
身軽な雰囲気で品川行きの電車を待っている。
「八日が始業式だから…
俺は月曜日から行く。
その次の週が試験だ。近くだからちょうどいいや。」
「それがセンター試験と言う事だな。」
「ああ、二日間。」
「お前、宿で勉強出来たか。
教材を持って来たのは知っているが、
スキーをし過ぎて疲れたのではないか。」
「そんな事は無い。
読むべき箇所は全て読んでマスターした。
問題集もやった。」
確かに普通の学生のように
机にかじり付いて勉強、というものではなかったが、
夕食が済んだ後の時間は
何となく持って来た本や問題集を見ていた。
京介にしては、
まあ、珍しい光景だった。
その間、栄はまた風呂へ行ったり、
館内で繰り広げられていたショーを見たり、
顔見知りになった観光客と話し込んでいた。