京介が目を凝らして辺りを見回すと、
地下室の床に望月を初め渡辺、大下、是枝、川本が倒れていた。
そして少し離れた所にはもう一人、
高校生の死体が…
制服の胸にナイフが突き刺さったままの完全な死体が見えた。
京介は急いで望月たちを見直した。
望月以外は意識が無いようだが、死んではいない。
今のところは気を失っているだけのようだ。
その事を確認した京介、安堵の気持に包まれた。
その瞬間捜査五課の刑事が悪人に変身した。
ピストルを取り出して佐伯と京介に向けている。
「木原、お前… 」
佐伯が信じられないような声を出し、
自分に向けられているピストルと握っている男の顔を見ている。
「警部、悪く思わないでくださいよ。
効率の良いサイドビジネスを邪魔されたくは無いですからね。」
「お前… 押収したヘロインを横流ししていたのか。」
そう言えば、押収したヘロインが少ない、
という話を聞いた事を思い出している佐伯だった。
盗まれた、と言うならば
犯人は警察内部の者、
内密に捜査が行われているはずだ。
殺人事件に追われている捜査一課には無縁の話に聞こえるが、
五課ともなれば…
佐伯は木原を睨みながら頭をフル回転させ、
事の次第を掌握している。
「横流し… まあそうも言えますけどね。
俺たちが主になって
市販の頭痛薬タイレノールと混ぜ合わせて
チーズを作っていたと言う事ですよ。
警察の給料だけでは楽しい事が出来ませんからね。
警部、どうです、
我々と一緒にやりますか。
捜査一課の警部がいれば鬼に金棒だ。」
と、木原はふてぶてしい顔をして佐伯に誘いをかけている。