春の空

始まりの日

～第一章はじまりの日～

それは、中学三年生になったばかりの時始まったのかもしれない。
クラス替え当日。
坂田雄二は三年四組の前に突っ立っていた。
「あー…鬱だよ…本当に。」
雄二は無意識にため息をついていた。
「クラス替えって、知らない人間と一からやらなきゃいけないから、しんどいな…。」
雄二は、もうひとつため息をついた。いつものことだがクラス替えの日は緊張する。
少しの間、扉の前に立っていた雄二は一つ、ふぅっ、息を吸って、
扉を開けた。
扉を入ってすぐ、雄二はとりあえず、教室を見渡した。
今来ているのは、全員の半分ぐらいか…。
雄二があたりを見回していると、1人の男が近づいてきた。
「よう、雄二、おそかったじゃないか！」
近づいてきたのは、幼馴染の親友の荒木亮太だった。
どうやら、彼も同じ三年四組らしい。
「亮太も一緒だったのか…良かったぁ！」
雄二はとりあえず知り合いがいることに安心した。
ちなみに、彼、荒木亮太とは、小学生からの付き合いで、
現在もパソコン部というグループで昔から一緒にいることが多かった。
これは、余分な情報かもしれないが、亮太が部長。雄二は副部長である。
「まだ、半分ぐらいしか来てないみたいだね…。」
亮太は、ああ、と呟き、窓際の席を指差した。
「あそこがお前の席だぞ、夏は涼しいが冬は寒いだろうな。」
その席は、運動場側に位置する窓際の席だった。
でも、どうして席の順番を亮太が知っているんだ？
「前の黒板に席の順番が張り出してあるんだ。目を通しておくといいぞ。」
雄二の心を見透かしたのかのように亮太は口を開いた。
ふーん、と雄二はそっけない返事をして、黒板の方へ移動した。
どうやら、自分は本当にあの位置らしい。窓際の席は涼しいし、先生もあまり来ないし、
昼寝を良くする雄二には絶好のポジションだった。
「横の人も気になるな…。」
雄二は張り出してある紙の中の自分の席の隣の名前を見てみた。
“赤石祐樹”。