翌朝、いつもより早く家を出て、優しく降る雪の中を白い息を吐きながら走った。

翔が教室へ入った時に、孤独を感じさせないように…。



教室へ入ると皆が笑顔で話していた。
まるで何もないように、普段と変らない一日の始まりの風景に、私は耐えられず屋上へと向った。

翔が来た時の為に教室に居ようと決めたのに、それすら私はできなかった。


屋上一面に広がるまっさらな雪の上をゆっくりと歩き、フェンスにもたれ、和希に借りたままのマフラーで口元を覆い、涙が溢れるのを堪えた。

「彩」

優しい声に振り向くと、いつもの笑顔で翔が立っていた。

「翔…ごめんね」

堪えていた涙が溢れた。

「泣くなよ」

冷えた手で私の頭を撫でる翔に、笑顔を返した。
そして、翔の差し出した片方のイヤホンを受け取ると、流れてくる悲しい歌に合わせて、翔が歌った。
その声が切なくて、胸が締付けられた。