翌朝、葉月を送って行く和希が心配で、私たちも一緒に葉月の家へと向った。


葉月が玄関のドアを開けると両親が慌てて飛び出して来た。
そして父親は和希を見るなり、殴りかかった。


父親の怒りは治まってはいなかったけど、私たちはただただ頭を下げ、葉月の家を後にした。



「大丈夫?」

和希の赤く腫れた頬にそっと触れた。

「平気、平気。 これで済んだだけよかった」

そう言って微笑んだ和希は、ありがとうと、頭を下げた。
翔は和希の頭をクシャクシャと撫でて、帰って行った。

和希はそのまま私の家へ来て、部屋へと上がっていった。

「冷えピタがあった」

冷蔵庫から見つけた冷えピタを持って部屋へ戻ると、和希の頬に貼った。

「冷てーな」

「当たり前でしょ。 冷たくなきゃ意味ないじゃん」


顔を歪める和希を見ながら、こんな怪我をしてまで葉月と一緒にいるのはただ"愛してる"からなんだと思っていた。

二人の本当の想いになんて、気付きもしなかった。


「昨日は、ちゃんと伝えられたか?」

「うん」

私の言葉に、和希は微笑んだ。




和希と葉月が別れたのはその後すぐだった。

別れた理由を和希は話してくれず、私は二人が別れた事実が信じられなかった。
だけど、和希の口から葉月の名前が出てくる事は無くなり、葉月からも別れたとメールが来て、信じざるを得なかった。


それからの和希はとにかく元気で、その姿がなんだか痛々しくて、私は和希との時間を優先した。
してあげられる事なんてないから、せめて側に居たいと思った。