【健の指導教諭記録】
「出席を取ります。青山君……」
菫の声が教室に響く。
明日からは、SHR丸ごと任せる予定だ。
今のところ、菫はよく頑張っているようで、生徒からの評判もいい。
昨日はうちのクラスの女子、2つのグループをくっつけて、大勢に囲まれて弁当を食べたそうだ。
昨夜、電話で興奮したようにしゃべりまくる菫を思い出した。
『私、先生が指導教諭でホント良かったよ~。
裕香なんて岡崎先生から、せいぜい足手まといにならないように、無駄なことはしないでちょうだい!
……なんてことを言われたんだって。ひどいよね~。
あとね、お兄さんの話をわざわざ教室でして、プレッシャーかけてきたり。
お兄さんと裕香は違うのにさっ!』
「ふ~ん……まあ、2週間の辛抱だ。
指導案や授業さえ教えてもらったら、後はなるべく当たらず障らず、だな。
音楽は一人しか教員がいないから、俺も裏工作のしようがなかった」
実は、去年も実習生が来たが、うまくいかなかったらしい、という話を聞いていたからだ。