次の日。菫先生のお母さんに連れられて、産婦人科へ行った。
菫先生のお姉さんが、小梅ちゃんを産んだという病院。
問診票に記入し、名前が呼ばれるまで待つ。
逃げ出したい気持ちで、一番隅っこの椅子に座っている私を安心させるように、菫先生のお母さんが色々話しかけてくれた。
「ここの病院は優しい女医さんだから。
不安な気持ち、おばさんもよく解るな~。
でも、ここで逃げていたら誰にとってもいい結果にならないわ」
頷くことしかできなかった。
もう、逃げてはいられなかった。
名前を呼ばれて、早速内診台へ案内された。
下を全部脱いで、ピンク色の椅子に座ると、突然動き出してびっくりした。
カーテンで向こう側は見えないけれど、白黒のモニターのようなものが見えた。
「はい、力を抜いてね」
冷たいものが体に入り、モニターの映像が動いた。
「この小さくて白い丸が、赤ちゃんね……ん~、もうちょっとよく見せてね」
赤ちゃん……。豆のような形をした、でも確かに私のお腹にいる赤ちゃんを初めて見て、胸がいっぱいになった。
先輩の赤ちゃん。私のお腹で生きている赤ちゃん……。
先生が、お腹の中を色々見ようとしていた。
ちょっと痛くて、呻いてしまった。
「もしかしたら、お腹が痛かったり、何となく違和感があったんじゃない?」
カーテンを少し開けて、先生が私の顔を見た。
吐いているせいで、腹筋が痛いと思っていたけれど、実は違ったのかな?
頷いた私を見て、先生は少しだけ難しい顔をした。