【健の休日】
車内に漂うポテトの匂いに、腹の虫が鳴く。
朝飯も食わずに走り回ったから、さすがに腹ぺこだった。
木内と吉川の下宿先である『ボーディングハウス三沢』の前にたどり着いた。
ジーンズにパーカー、いつものセルフレームの眼鏡をかけた吉川が、ちゃんと言われたとおりに待っていた。
車を横付けして、助手席側のドアを開けてやる。
「早く乗れ。今から病院へ行くぞ」
「はい・・・・・・」
車を走らせながら、緊張して座っている吉川に話しかける。
「お前の親父さん、町立病院のドクターなんだってな」
「え? はい。そうですけど・・・・・・」
「何科なんだ?」
「・・・・・・産婦人科です」
げっ!
それはまた、微妙な立場に追い込まれそうだな、お前。
っていうか、親が産婦人科医なら、息子にちゃんと避妊の知識くらい叩き込んで欲しいものだ。