「あ、あの、池波さん……」


次の授業がある教室に向かう途中でそう呼ばれ、振り向いた先にはクラスメイトがいた。


は?

名前なんていちいち覚えてないわよ。


「こ、これ落とした……けど……」


そう言われて見せられたものは、私がメモ帳に描いた服のデザインの紙切れだった。

ま、まさか落としてただなんてっ……!!


「お、落としたものをイチイチ見ないでよ、常識知らずなんだから!」

「ご、ごめんなさい!!」


……あぁ、まただ。

また素直になれなかった……。

そんな常識私でも知らないわ。


こんな感じで素直になれず、いつも一人な私・池波胡桃(いけなみくるみ)。

こんなんだから周りが私を避けて通り、友達なんて出来もいない……。


「……寂しい……」


一人の教室で呟いた声は、静かにその場に響いた……。