その後、くノリさんは自分のバンドの経緯を色々話してくれた。

日本人がストーンズをプレイするのがオージーには珍しいらしく評判がいいことや
ドラマーは近々帰国するらしく、ちょうどドラマーを探している最中ということが分かった。

ノリさんはビジネスビザで滞在しているので当分はケアンズにいるが、
他のメンバーは時期が来れば帰国しなければならない。


「メンバー探しが大変でねー」とぼやいていた。


連中がそろそろ引き上げる時ノリさんが


「じゃー来週の日曜日ね!電話するから!」


と、言ってジョノスを後にした。

突然来週プレイすることに決まりうれしかったが、
内心「ストーンズか・・・ちょっと退屈だな・・・」と思った。

しかし腕がウズウズしていた俺はやる気になっていた。
本来はオージーとプレイしたかったのだが、
話し相手もいない孤独な今の俺には「とりあえず」という気持ちだった。

一週間後、待ちに待った本番当日、ノリさんが車で迎えに来てくれた。

練習はノリさんの家でやるらしくドラムキットは既に知り合いに借りてもらっていた。

家に着くとノリさんの奥さんと1歳になる子供もいた。


「はじめまして」


「どうも。」


そうこうしているとベースのヒデが入ってきた。

相変わらず人当たりの良さそうな彼は俺より年が一つ上だった。

そしてギターのクニ。俺よりも若く二十歳で、大学を休学してワーホリでケアンズに来たらしく、
ケアンズの前にはシドニーで3ヵ月近く過ごしたと言う。

シドニーは便利だが知り合いがあまり出来なかったのでケアンズに来たと言う。

ケアンズは小さいが友達も出来やすく、
オージーもシドニーに比べたら遥かにケアンズの方がフレンドリーだという。


「ケアンズに来て正解だよ!」


「そうなんだ・・・」


右も左わからない俺にクニがそう教えてくれた。

もう一人、日本人とチャイニーズのハーフのサックスのウォンさんは
練習には来ることができず、本番に登場するらしい。