と風が耳元を過ぎる音。
と、端を見ると、まさかのまさか。
下は大きな暗闇が……その中にたなびく金色の尾っぽーっ? 

 グリフの見立てによると、飛空術を行うこと自体は、お姫様は何も言わなかったが迷惑そうだったという。

 今もながーい首の頭先で前方を見ている。

「ほんと、ごめんね」

やっとの思いで紡ぎ出した言葉は、風の音にかきけされた。

「あんだ、生き延びやがったのか」

 ガナッシュはものの言い方だけ気をつけたらもっとモテると思う。彼は赤い長髪をバサバサいわせながら前方を見ている。

「でへっ、ごめんね、生き延びちゃってて」

 あたしは言うのだが、なぜかいっつも敵わない。

「体の毒が出きるまで、じっとしてたほうがいいぜ」

 ガナッシュは一瞬だけ顔をむけると、二度とふり返らなかった。