「いい大人が、精霊とはいえガキを泣かせるのが見せ物か、芸のないことだな……だから、撤去命令が出た」

 客席は騒然とした。

「え……だって、あの子供は人間じゃないんだろう。知能だってないし、失敗ばっかして、だからお仕置きされてるって、演出だろう」

「『人権の』侵害にはあたらないはずだよな。人間じゃないんだから」

「それが売りなんだからやらせとけ! ひとの娯楽をつみ取るなんて野暮だぜ。どうせ鞭だって偽物だろ。アー、興ざめだー」

 そのときのお客さんはぞろぞろ出てった。

「くそお、ひとの商売を無にして……誰のさしがねだ!」

「相手は知らない方が身のためだぜ」

「そんな勝手は聞いたことがない!」

「耳が悪いだけだろ」

 テントの反対側からぴかぴかの鎧をつけ、きりりと口をひき結んだグリフが騎士然として言った。