一行にとって水はなにより大事。けど将来自分の歯が全部無くなるって、どう思う? 嫌でしょ? あたしだって監督不行き届きでドロップスが歯無しで人生のほとんどを過ごすなんて考えられない!

「はい、ごっくん」

「うっくん」

「まあ、じょうず! もう、前掛けは卒業ね」

「あっぷるぅー、そつようって、なんなろ?」

「ええっ、そ、そうね。今まで大事だったモノやコトに、さよならすることかなあ?」

「あっぷるはぁ? なにをそつようしたろ?」

 ドロップスの一言にどきっとして、言葉が口に出なかった。情けない……あたしは歯を食いしばった。ドロップスを正面から見る。ちゃんと笑えてるか自信はない。

「いろんなこと、よ」

「そうかあ……あっぷるはドロップスがいらなくなったらそつようしる?……」

 子どもならではの額面通りの解釈に丁寧に言い直すあたし。