と、後で枯れ果てた立木の幹に蹴りを入れて一人でがなっていたけど……当然のように、 誰も聞いてない。

「どうでも良いが、どこかで寝る場所はないのか?」

 戻ってきて、ガナッシュが言った。さらさらでちょっぴりうらやましい赤毛を振り乱し、息を切らせて……疲れたらしい。だったら、暴れなきゃいいのに。

「ここには亜竜一族の使う厩舎がある」

「亜竜一族って?」

「人竜のことだ。かつて竜と人々が交わってできた種だ。まあ、小竜たちの目付なんだが、砦に住み込みをしているものもある」

「へいへい、こちとらイッコも期待してませんでしたよ、と」

「よそう。こっちは大手を振って歩ける身じゃない。我々は異端だ。秘密の依頼なんだからそれらしく馬フンにまみれて暖まろう」