「ディノーディアさんって、本当に竜だったの?」

 みんな彼女の周りに詰め寄った。

「うむ」

 さっきの戦闘を見ても、圧倒的だった。本当、今でも信じられないよ。

「えっとさ、たぶん聞きかじりに間違いなかったら、だよ? ディノーディアさんって……竜のお姫様じゃない?」

「ええーっ」
 みんながこちらを見るので、少したじろぐ。

「だ、だってだって、ここへ来る途中の街で、広場の吟遊詩人がいってたよう……?」

 あたしだって詩人だ。絶対、聞き違えたりしない。それだけは自信がある。

「彼女の名はダイノダイア。黄金の姫竜で一人前の証としてイニシエーションを執り行う、つまりお婿さん選びみたいな感じね」

 ごくごく最近の情報だ。それが後半のあたり、秘匿扱いなんで、誰から聞いたとは言えないんだけどさ。ただ、別に口にしないだけで、客引きの見せ物小屋なんかでは早々とネタにされている。



「へえー、れいの生け贄探しか」

 あくまで人聞きの悪い言い方をする人なんだ……。ガナッシュってば。